『ゴールドマンコレクション これぞ暁斎!』河鍋暁斎の展覧会

『ゴールドマンコレクション これぞ暁斎!』河鍋暁斎の展覧会

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幕末~明治期に活躍した画家、河鍋暁斎(かわなべきょうさい)の展覧会「ゴールドマンコレクション これぞ暁斎!」が、渋谷にあるBunkamura ザ・ミュージアムで開催されています。
伊藤若冲や歌川国芳に並び「奇才」と呼ばれた暁斎。大胆な構図と「グロ可愛い」タッチは近年再評価がされ話題となっています。今回筆者が観覧した初日の様子や公式グッズ、そして暁斎の魅力についてレポートします。

世界が認めた画力と万国飛(ばんこくひ)

万国飛の印(購入の図録より)

万国飛の印(購入の図録より)

日本において暁斎作品はその画力ゆえ(?)近年まで高い評価を得られませんでした。しかし海外では「北斎に代わる日本人画家」として当初よりその名を轟かせていました。
明治初期には西洋人の日本画コレクター、アーネスト・フェノロサなどから直接、作品を購入されていました。収集された一部の作品は英国の美術館収蔵や万国博覧会への出品が行われ、暁斎が世界に知れ渡るきっかけになったのです。

また明治時代の「鹿鳴館」設計者「ジョサイア・コンドル(イギリスの建築家)」は河鍋暁斎に師事して日本画を学び、号を「暁英(きょうえい)」と称するほど彼を敬愛した人物で、自国へ鴉図(からすず)を持ち帰ったところ瞬く間に評判となり、コンドルを通じて100枚の作品注文がされたと伝えられています。

万国飛(ばんこくひ)」は鴉図シリーズに押された印で、多くの暁斎作品が世界に羽ばたいていったシンボリックな存在ともいえます。本展にもこの鴉図は出品されているので見どころの一つです。

ところでゴールドマンって何者?

本展のタイトルにもなっている「ゴールドマンコレクション」。このゴールドマンとはロンドン在住で世界屈指の暁斎のコレクター「イスラエル・ゴールドマン」氏のことです。本展展示の173作品、全てが彼のコレクションだというから驚きです。
ある時「なぜあなたは暁斎を集めるのですか?」という問いにゴールドマン氏は答えます。

なぜなら暁斎は面白いからです!

アナタガ、好キダカラ~!と同義語ですね(古)

では「面白さ」とは何でしょうか?描写、色彩、構図、技法、そして人柄など、暁斎には人を驚かせたり魅了したりする要素があります。
本展出品作品を元に暁斎の魅力を少しだけご紹介します。

日本画の狂奏曲-多彩な技法

鳥獣戯画を思わせる作風「虎を送り出す兎」(購入の図録より)

鳥獣戯画を思わせる作風「虎を送り出す兎」(購入の図録より)

暁斎作品の魅力のひとつに多彩な技法・画風があげられます。
その裏付けとして幼いころより伝統的な日本画の技法を学んだ経歴があります。7歳で歌川国芳に入門、10歳の時には駿河狩野派の前村洞和に入門し「画鬼(がき)」と呼ばれ周囲から親しまれます。すると19歳という異例の若さで修業。後に土佐派、琳派、円山四条派、浮世絵など流派にとらわれず様々な画流を学びます。円山四条派を連想させる「雨中鴉」、鳥獣戯画を彷彿させる「虎を送り出す兎」、大判錦絵の「蒙古賊船退治の図」では歌川派独特の迫力ある構図など、今回の展覧会でもその多彩な日本画の狂奏曲を楽しめます。

画鬼の戯曲-擬人化の達人

「百鬼夜行屏風」(購入のポストカードより)

「百鬼夜行屏風」(購入のポストカードより)

神様仏様もひとたび暁斎の手にかかれば親しみあふれるものに変化します。「大黒恵比寿宝の蔵」では恵比寿天がそろばんをはじき、大黒天が帳簿を眺めるという人間臭い作品となっています。
鍾馗図(しょうきず)は疱瘡除けや学業成就に効があるとされ、端午の節句に掛け軸等で飾られる絵です。一般的に鍾馗が鬼を懲らしめている構図が多いのですが、暁斎の描く鍾馗は単に懲らしめるのでなく、サッカーボールのように鬼を蹴り上げたり、河童をおびき寄せるおとりに鬼を使うなどユニークな作品となっています。鍾馗図をはじめ妖怪や幽霊のような架空の肖像についても生き生きと描かれ、その姿はいずれも滑稽です。

動物画には擬人化が多く用いられています。曲芸をしたり、恋文を送ったり、合戦に参加したり・・・擬人化された動物たちは時に人間社会の風刺として描かれています。例えるならば明治時代の「けものフレンズ」と言ったところでしょうか。

落款(らっかん)にも暁斎のこだわり-キョウサイン

「新版かげづくし」は落款まで洒落っ気たっぷり(購入の図録より)

「新版かげづくし」は落款まで洒落っ気たっぷり(購入の図録より)

暁斎作品の鑑賞ポイントとして落款(らっかん)も挙げられます。

■落款とは
落款は、落成款識(らくせいかんし)の略語。書画を作成した際に製作時や記名 識語(揮毫の場所、状況、動機など)、詩文などを書き付けたもの、またその行為を言う。その文を款記といい、その時捺す印章を落款印と言う。慣習上、署名として押捺された印影、または署名に代えて押捺した印影をさすことも多い。署名用の印そのものを落款と称することもある。
出展:ウィキペディア

先に述べた「万国飛」のほか、作品「象」では署名の後に「一生稽古」の印があり「これだけ描ける俺でも一生稽古するぜ」という自信と威圧を感じざるを得ません。

中でも筆者のお気に入りは木版画「新板かげづくし」の印です。兎の形で頭の部分に「狂」の文字、お腹にサイコロが描かれています。狂=キョウ、ウサギ=ウサ、サイコロ=サイで「暁斎」をあらわしています。
また本展は暁斎の春画コーナーも設けられています。そこでは春画ならではの印(とてもブログでは書けません^^;)を楽しむことができます。
強烈な画力だけでなく、オリジナリティー溢れる落款(筆者は勝手に「キョウサイン」と呼んでいます)にも注目してみてください。

「暁斎展」公式グッズは秀逸!

暁斎展のオリジナルグッズも種類豊富です

暁斎展のオリジナルグッズも種類豊富です

「これぞ暁斎!」展はオリジナルグッズも種類豊富に販売されています。図録・クリアファイル・マスキングテープ・iPhoneケース・マルチクロス・枡・トートバッグ・手ぬぐい・ポストカード・マグネット・Tシャツ・飴など・・どれをとっても暁斎の世界が楽しめるグッズばかりです。
また、グッズコーナーにはガチャガチャも設置されており、300円で一回まわすことができます。暁斎が描いたかわいいキャラクターのピンバッチが出てきます。

筆者が購入した暁斎グッズ

筆者が購入した暁斎グッズ

図録とトートバッグはセットで買うとお得です。トートバックは三味線を弾く骸骨と「This is Kyosai!」が金色にプリントされていて実にクールです。

「暁斎展」の混雑状況

筆者が観覧した初日(平日の昼)は雨天ということもあり、並ばずに入場が可能でした。観覧は平日午前~昼までがオススメです!
また本展は173作品(期間中の展示替えは無し)という比較的出品数の少ない展覧会ですが、音声ガイド(※)を使用するとゆったり1時間半程度に見てまわれる内容でした。

「奇才」「画鬼」と呼ばれた男、暁斎の暁(作品)をその目に焼き付けてください!

※音声ガイド:貸し出し価格:520円(税込)。ナビゲーターは落語家の春風亭昇太さん。オープニングとエンディングでは和楽器とロックを融合させた和楽器バンドのイメージソングが流れます。

「ゴールドマンコレクション これぞ!暁斎」展 チケット/基本情報

開催期間:2017年2月23日(木)~4月16日(日)
開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
休館日:会期中無休
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム

観覧料
当日券 前売り券 団体券
一般 1,400円 1,200円 1,200円
大学生・高校生 1,000円 800円 800円
中学生・小学生 700円 500円 500円

公式サイト
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_kyosai/