『日本画の教科書 東京編-大観、春草から土牛、魁夷へ-』 山種美術館の展覧会

日本画の教科書 東京編

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東京都渋谷区にある山種美術館では、【開館50周年記念特別展】山種コレクションⅥ『日本画の教科書 東京編ー大観、春草から土牛、魁夷へー』展が開催中です。2016年3月19日から6回に渡り開催された『開館50周年記念特別展』の最後を飾る展覧会です。山種美術館が誇る近代日本美術史の「教科書」とも呼べる多くの名画が展示されています。

山種美術館と創立者「山崎種二」

山種美術館入口

山種美術館入口

山種美術館は、山種証券(現・SMBCフレンド証券)の創立者である山崎種二(やまざきたねじ)氏のコレクションを元に、1966(昭和41)年に日本初の日本画専門美術館として開館しました。種二は丁稚奉公に出ていた幼少時代から絵画収集の願望があり、後に「酒井抱一」作とされる絵画を購入、しかしこれが偽物であることが判明します。以降、種二は同じ失敗をしないよう同時代画家と直接交流を持ちながら作品を購入していきます。これが山種コレクションのはじまりです。

「絵は人柄である」という信念のもと横山大観上村松園川合玉堂などの日本画壇を代表する人物と家族ぐるみの交流をし(当時は)知名度が低かった画家でも将来性を感じれば積極的に支援しました。その信念は2代目館長(山崎富治)3代目館長(山崎妙子)へも受け継がれ現在に至っています。

創立者・山崎種二の画家との交流

本展の一番のみどころは創立者・山崎種二と出品されている画家との交流のエピソードです。種二は特に親しかった横山大観から「そろそろ人のためになるような事をしたらどうだ」との申し出により美術館の創立を決意します。その際「美術館をつくるなら」という条件下で購入を許された作品『心神』は本展にも出品されています。大観の代名詞ともいえるこの富士山の絵画は山種美術館の始まりの作品と言っても過言ではないでしょう。
こちらのエピソードは音声ガイドで紹介されていますので、合わせてご利用をおすすめします。

本展ではそんな画家たちのとの交流で集められた作品が展示されています。
筆者は土曜日の13時30分に来館。大きな展示スペースではなかったですが、休日にも関わらず1時間程度かけてゆっくりと鑑賞できました。なお、本展の展示作品数は47点となります。

「日本画の教科書」展の見どころ

『粧蛾舞戯』速水御舟

『粧蛾舞戯』速水御舟

日本画の教科書 東京編」展は、原則写真撮影はできませんですが、速水御舟の《昆虫二題》のうち「葉蔭魔手」「粧蛾舞戯」(いずれも山種美術館所蔵)については撮影が可能です。

速水御舟の他にも近代日本画を牽引した画家たちの展示で埋め尽くされています。横山大観下村観山菱田春草速水御舟鏑木清方東山魁夷平山郁夫・・1人の画家のみで展覧会が開かれるビッグネーム揃いです。以前記事でご紹介した加山又造の作品も展示されていました。

『生誕90年 加山又造展~生命の煌めき』日本画家-加山又造の展覧会
「日本画は、まだまだ若すぎるくらいである。だから、私たちは、より自由にものを見描かねばならぬ。見かけの古い新しいという、あまり根拠のない批評の地点からも、より自由に。」これは近代日本画家「加山又造(かやままたぞう)」の言葉です。西欧絵画や中国水墨画など海外の技法も取り入れ、日本画を革新的に昇華させた人物です。そんな加山又造生誕90年を記念した巡回展「生誕90年 加山又造展~生命の煌めき」が、中央区日本橋高島屋の8階 ホールで開催されています。

作品は「第1章 近代の東京画壇」と「第2章 戦後の東京画壇」と時代ごとに展示されており、院展・日展に所属した作品を中心に日本画の近代化の流れも感じることができ、まさに「日本画の教科書」と呼べる内容となっています。

院展とは

公益財団法人日本美術院(にほんびじゅついん)は、1898年創立の美術家の団体であり、公益財団法人。院展は日本美術院の公募展(展覧会)の名称として現在も使われており、院展と日本美術院はほぼ同義に扱われることが多い。現在は日本画のみを対象としている。

出展:ウィキペディア

日展とは

日本美術展覧会(にほんびじゅつてんらんかい)は、公募美術展覧会の1つの名称である。通称は「日展」。公益社団法人日展が主催する。

出展:ウィキペディア

また本展の作品には切手のデザインで採用された前田青邨の『腑分』、教科書に載った小堀鞆音那須宗隆射扇図』、安田靫彦出陣の舞』、東山魁夷年暮る』などもありました。

館内のグッズ・カフェスペース

山種美術館のミュージアムショップでは本展に特化したオリジナルグッズが販売されています。
チケットファイル(各450円)、A6ノート(各500円)、はがき(各100円)など、展示品に合わせたグッズが並びます。特に山種美術館と深い関わりがある横山大観や東山魁夷のグッズが多く、東山魁夷の作品『年暮る』のブックカバーとしおりのセット(380円)は作品の魅力が濃縮されていてオススメです。図録は『開館50周年記念山種美術館近代日本画名品選100』というもので、山種美術館のコレクション全体の内容として販売しています。ショップは展示スペースと展示スペースの間にあるため、買い物の利用にもチケットが必要となりますのでご注意ください。

Cafe~椿~」は1Fエントランスにある喫茶スペースで、特製和・洋菓子やオリジナルメニューを味わえます。とくに和菓子は、展覧会ごとに出品作品に関連したモチーフを選び、青山の老舗菓匠「菊家」に特別にオーダーしたオリジナルのものです。今回の展覧会でも横山大観の『心神』をモチーフにした富士山の黒糖を使用した和菓子ほか、作品の余韻も味わえるものが並びます。こちらはカフェのみの利用も可能です。和菓子に関しては持ち帰りもできます。

『心神』モチーフのお抹茶セット

『心神』モチーフのお抹茶セット

山種美術館が誇るコレクションの数々は近代日本美術を語る上でどれも外せないものばかりでした。同館では今後「花 * Flower * 華 ―琳派から現代へ― 」「没後50年記念 川端龍子 ―超ド級の日本画―」「上村松園 ―美人画の精華― (仮称)」など、手札の強い(?)コレクションの展覧会が企画されています。またそれに合わせた和菓子も楽しみで^^;個人的に注目している美術館のひとつです。

「日本画の教科書 東京編ー大観、春草から土牛、魁夷へー」展 チケット/基本情報

開催期間:2017年2月16日(木)~4月16日(日)
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(但し、3/20は開館、3/21は休館)
会場:山種美術館

観覧料
当日券 前売り券 団体券
一般 1,200円 1,000円 1,000円
大学生・高校生 900円 800円 800円
中学生以下 無料 無料 無料

■お得な割引サービス
きもの割引:会期中、きものでご来館のお客様は、団体割引料金となります。
リピーター割引:使用済み入場券(有料)のご提出で会期中の入館料が団体料金となります(1枚につき1回限り有効)。
※リピーター割引は、同一の展覧会を2回目以降にご覧いただく場合に有効。
他の展覧会の入場券はご使用いただけません。
※ 複数の割引の併用はできません。

公式サイト
http://www.yamatane-museum.jp/