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「日本画は、まだまだ若すぎるくらいである。だから、私たちは、より自由にものを見描かねばならぬ。見かけの古い新しいという、あまり根拠のない批評の地点からも、より自由に。」
これは近代日本画家「加山又造(かやままたぞう)」の言葉です。西欧絵画や中国水墨画など海外の技法も取り入れ、日本画を革新的に昇華させた人物です。そんな加山又造生誕90年を記念した巡回展「生誕90年 加山又造展~生命の煌めき」が、中央区日本橋高島屋の8階 ホールで開催されています。
本展は一般初公開を含む約50点が出品されています。平日昼にも関わらず、会場は賑わっていましたが作品を鑑賞するのには支障はなく1時間程度で全作品の鑑賞が出来ました。場内は彼の歴史を辿るように展示がされています。絵画に留まらず、陶器や着物の絵付けなどの加山が取り組んだ工芸品まで多様な作品が展示されていました。
時代ごとに開花する「作風」の変遷
加山又造が最初に作品を発表したのは、敗戦により日本文化を批判する風潮が盛んな時期でした。そんな中、彼は『新しい日本画』を模索していきます。
1950年代は動物画を多く描いています。シュールレアリスムやキュビスムの影響を受けた加山の動物たちはデフォルメされ、その姿は現代のアニメーション作画にも通じます。
本展に出品されている六曲一双の屏風に馬を描いた作品『駈ける』はラスコーの洞窟壁画を参考にしつつ、近代西洋画の技法を使った若き日の力作です。
1960年代には「宗達光琳派展覧会」を観て伝統絵画の可能性を再発見したことにより大和絵や琳派のモチーフを再構築した作品を描いていきます。尾形光琳の『紅白梅図』に魅せられ技法に関心を抱きました。本展出品の『紅白梅』は光琳の用いた技法を推測し仮説に基づいて手がけられています。
1970年代には裸婦や猫など曲線が美しいモチーフを描きます。この頃の作品の中にはグラフィックアートも取り込んだものもあります。この頃の加山の作品が並ぶ本展のコーナーはファッショナブルでモダンな日本画を楽しむことができます。
この頃になると日本画伝統へ回帰し水墨画を手掛けるようにもなります。
水墨画にエアブラシを導入!?
水墨画は墨と筆のみで描くのが一般的です。しかし、加山は水墨画の制作に紙やゴムでマスキングしながらエアブラシや噴霧器を利用して画面に墨を重ねました。日本画の常識を覆した加山の作品(雲龍図)は京都にある天龍寺の天井画に採用されました。
「近現代に開発された道具を活かしてこそ、現代の絵画が実現する」と加山は家族に語っていたそうです。
同じ雲龍図を描いた俵屋宗達がもし現代に生きていたら『こんな便利な道具を使わなかったわけがない!』そんな想いも込められているのかも知れません。
一方で長谷川等伯や中国の牧谿(もっけい)などの水墨画の名画を訪ねて研究し、制作に取り組んでいました。本展出品『龍図』など古来のモチーフを新しい技術を利用して描いた作品が並びます。国内外、新旧問わず様々な画風を取り込んでいった加山が、それらを日本画に昇華させる時、独自の迫力と融合するのです。
工芸でも輝く加山の世界
加山は工芸にも挑戦しています。衣装図案家の家庭で育った影響もあり、工芸への思い入れがあったようです。陶磁器、染織への絵付け、版画など種類は多岐に渡り、車に塗装した作品もあります(本展示には車の出展はありません)。いずれも絵画から飛び出してきたようなデザインで目を惹きます。
本展では奥さんやお孫さんのために描いた着物も展示されています。加山の家族への特別な想いを感じられるのも今回の見どころです。
「加山又造展」公式グッズ
展示室を出るとグッズコーナーがありました。図録・てぬぐい・トートバッグ・ポストカード・マグネット・クリアファイル・Tシャツ・缶バッチ・あぶらとり紙・砂糖菓子・チョコレートなど。グッズの種類はとても多かったです。
筆者は図録・砂糖菓子・あぶらとり紙・てぬぐいを購入しました。図録は手ごろなサイズ(具体的なサイズ)で作品「猫」の図版もついてきます。
本展は上述の通り、日本画以外も多くの作品が展示されています。
日本橋界隈へおでかけの際、革新的な近代日本画に触れてみてはいかがでしょうか。
「生誕90年 加山又造展~生命の煌めき」展 チケット/基本情報
開催期間:2017年2月22日(水)~3月6日(月)
開館時間:10:30~19:00(19:30閉場)※最終日は17:30まで(18時閉場)
会場:日本橋高島屋8階 ホール
入場料:一般800円(税込)、大学・高校生600円(税込)、中学生以下無料
公式サイト
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/event/kayama.html