筆者にとって東京国立博物館(以下トーハク)は、芸術の素晴らしさを教えてくれたかけがえのない場所です。
好きが高じて通い詰めるうち、いつしか入館料が家計を圧迫しまうほど。何度か自重を試みるも、魅惑の特別展、そして総合文化展(平常展)においては年間を通じて展示替えが多く、誰も筆者を止めることはできませんでした(←何なの)。
そんな折、リピーター向けの会員制度(いわゆる年間パスポート制度)の存在を知り「賛助会(個人の維持会員)」に1年間入会してみました。この制度、ユーザーにとってお得なのか?検証結果をレポートいたします。
記事目次
トーハクの会員制度
賛助会を含む会員制度は、トーハクが平成13年4月「独立行政法人」となったことをきっかけに、文化財の収集・保管などで掛かる費用や財政の緩和を目的に設立された寄附会員制度です。
つまり会員から募った寄付金(会費ですね)をトーハクが関わる文化財の購入、修理などの博物館事業に充てるという具合です。
会員制度は大きく分けて「個人向け会員制度」と「団体向け会員制度」の2つが存在します。
筆者が入会した賛助会(維持会員)は前者に該当し、更に以下のように分類されています。
- プレミアム会員:1,000,000円
- 特別会員:200,000円
- 維持会員:50,000円
会員期間は、入会日より1年間(入会月の翌年同月末日まで有効)
※引用:
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=165
掲載金額はそれぞれの寄付金です。
一見すると高額に見えますが(プレミアムなんてもう)寄付金の謝礼として会員毎に多くの特典が設けられているのです。
会員特典について
維持会員となった率直な感想として、特典は充実したものでした。筆者が1年を通して得られた内容の一部をご紹介します。
総合文化展(平常展)無料観覧

総合文化展18室の様子
トーハクの魅力は総合文化展にあります。本館には日本美術史を彩る名品の数々、平成館には考古室、アジアの美術品が揃う東洋館、東京の正倉院と言っても過言ではない法隆寺宝物館などなど・・!
更に同展は国宝・重要を含め貴重な文化財が多く、冒頭の通り展示替えも頻繁に行われているので何度訪れても新鮮な内容です。
また写真撮影可能な展示品があるのも魅力です。最近だとカメラ片手の刀剣女子を多く見かけますよ(^^)
賛助会に入会するとこれら総合文化展に1年間、会員証提示で本人含む2名まで、開館時間内であれば何度でも入場が可能となります(プレミアム・特別会員・維持会員いずれも)。
※維持会員は別途特典として総合文化展の招待券を10枚もらえます。
特別展無料観覧
賛助会会員は年に数回行われる特別展も、会員証提示で入場無料となります。維持会員は各展1回(2名まで)という制限はありますが、別途招待券も郵送してもらえるので(招待券は各展3枚前後 ※1枚につき2名まで/トーハク指定の日時に限る)後述する内覧会を含めて最低でも3回はそれぞれの特別展へ行ける計算となります。
筆者はこの特典のおかげで、家族や友人と一緒にトーハクへ行く機会が増えました。
また特別展においては会期前に行われる「内覧会」にも無料招待されます。

「平安の秘仏」展、開会式の様子
内覧会は開会式典にはじまり、小規模ですがレセプションパーティもあり、ちょっとしたセレブ気分(笑)が味わえます。式典では主催者、関係者の想い聞くことが出来るので、展覧会をより楽しむための材料となりました。
また、郵送される招待状には図録の引換券が付いていて、内覧会当日に限り図録を無料で1冊受け取れます。本来数千円はする図録が毎回無料なので、筆者にとってこれは大きな特典でした。
年1回の報告&感謝会

伊藤若冲『玄圃瑤華』
画像提供元:http://webarchives.tnm.jp/
※元の画像より縮小加工して掲載しています
上述の通り賛助会費はトーハクへの寄付金として取り扱われますが、その用途については「報告会」が年1回行われ、購入した文化財等の詳細を知ることできます。
報告会の後は「感謝会」として立食パーティーが開催され、帰りにはお土産もありました。
因みに平成27年度、賛助会費の一部で購入した文化財は以下だそうです。
- 住吉物語絵巻断簡(すみよしえまきだんかん)
- 玄圃瑤華(げんぽようか)伊藤若冲自画自刻
- 桃源仙郷図屏風(とうげんせんきょうずびょうぶ)福田半香
レストラン・ミュージアムショップの割引

レストラン・ゆりの木のフォンダンショコラセット
賛助会の会員証提示によるサービスは他にも充実しています。
トーハクのレストラン・カフェ(ホテルオークラレストラン ゆりの木、ホテルオークラ ガーデンテラス、上島珈琲店 黒田記念館店)では食事の割引(10%)が受けられます。
またミュージアムショップでも割引(5%)があります(書籍/特別展会場を除く)。トーハクのミュージアムショップはオリジナリティあふれるグッズが多いので、物欲マシーンの筆者にとって割引特典は重宝しました。
寄付金は控除の対象
会費でもある「寄付金」はふるさと納税でもなじみの寄付金控除の対象となります。
「寄附金(総所得の40%を限度)-2千円」を所得から控除することができます。
50,000円を寄附した場合、確定申告をすることで最大で48,000円の控除が受けられます。税金控除の対象にもなって様々な特典が受けられるのはかなりお得ですね。
お得感を実数値で検証!

1年間で受け取った全図録
前述で寄付金控除の対象とは言いましたが、筆者のような専業主婦だと所得がないため控除を受けることはできません。
そこで2016年4月から2017年4月までに筆者が会員特典で鑑賞した「特別展(企画展含む)」と無料でいただいた「図録」の価格を中心に算出。(下世話にはなりますが)どれだけ通えば元が取れるかを検証してみます。
まずは昨年1年間に行われた「特別展のチケット(1人分)」と「図録」の料金一覧をご覧ください。
特別展名 | 当日券 | 図 録 |
---|---|---|
黄金のアフガニスタン | 1,400円 | 2,500円 |
古代ギリシャ | 1,600円 | 2,800円 |
ほほえみの御仏 | 1,000円 | 1,000円 |
平安の秘仏 | 1,000円 | 1,800円 |
禅 | 1,600円 | 3,000円 |
篆刻の軌跡(企画展) | 620円 | 2,500円 |
春日大社 | 1,600円 | 2,400円 |
茶の湯 | 1,600円 | 2,800円 |
合計 | 10,420円 | 18,800円 |
上記を元に以下条件で計算します。
- 各展覧会に1人で1回ずつ観覧したと仮定
計10,420円 - 各内覧会にて図録を無料で1冊ずついただいたと仮定
計18,800円
合計:39,640円
これだと維持会員費用である50,000円には10,360円足りないので、更に
- 1回620円の総合文化展(平常展)へ年17回(月2~3回平均)通えば
計10,540円となり
合計:50,180円で控除なしでも充分元が取れまする!
ちょっと強引過ぎましたかね?(^^;
ただし、上記計算には含んでいない他特典
- 特別鑑賞会の招待
- 他の国立博物館(京都、奈良、九州)平常展無料観覧
- 博物館ニュース郵送サービス(国内のみ、年6回)
などもあるので決して損はないと思います。
その上、所得がある方は確定申告で還付金として戻り、また支払いにはクレジットカードの利用もできるのでカードのポイントも貯まります。
総評するとかなりお得な制度ではないでしょうか。
とは言え、50,000円は家計的に難しい・・という方には以下、比較的安価な会員制度
- 友の会
年会費:8,000円 1年間有効(税込) - メンバーズプレミアムパス
年会費:一般5,000円 学生3,500円 1年間有効(税込) - 国立博物館メンバーズパス(4館共通/東京・京都・奈良・九州)
年会費:一般2,000円 学生1,000円 1年間有効(税込)
もあるので、是非参考になさってください。
文化財保護に貢献できる喜びを知った

賛助会案内と申し込みハガキ
ここまで賛助会の特典を語り、どれだけお得かを計算してきました。しかし、入会して分かった最大の利点は「個人資金で文化財保護に貢献できる」という喜びを知ったことでした。国内外、政治情勢が不安定な折、培われてきた文化・芸術が軽視される傾向があります。
今回の記事作成を振り返って、芸術・美術愛好家として今、この時だからこそ協力できるのがこの賛助会入会だと再認識しました。今年も引き続き賛助会員として文化財保護に貢献したいと思います!
因みに、、賛助会「プレミアム会員」になると「館長もしくは学芸員等との食事会」があるらしく気になって仕方ない筆者です・・。
賛助会についての詳しい情報はトーハクのウェブサイトを確認ください。
賛助会(個人)
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=165