『朝倉彫塑館』彫塑家・朝倉文夫の住居兼アトリエの美術館

朝倉彫塑館外観

「谷根千(やねせん)」こと谷中・根津・千駄木は台東区と文京区の境目付近に位置し、神社仏閣をはじめ谷中銀座商店街など、情緒あふれるその風景は下町散策にもってこいのエリアです。また谷根千は愛猫家にも人気で、実際に猫と触れ合えるだけでなく周辺の店舗には愛らしい猫グッズが多く見受けられます。
そんな谷根千散策の折、ぜひ立ち寄っていただきたい美術館が「朝倉彫塑館(あさくらちょうそかん)」。実はここも隠れた猫スポットなのです。

東洋のロダンと呼ばれた男、朝倉文夫

朝倉文夫は明治から昭和にかけての彫刻・彫塑家です。東京美術学校(現東京藝大)彫刻選科出身で、同時期に活躍した「高村孝太郎」とはライバルと称されていました。作品の写実描写から東洋のロダンとも言われています。
意外と知られていませんが、早稲田大学内にある大隈重信像も朝倉文夫の作品なのですよ。

彼の作品はいずれもリアルな造形美で、明治41年第二回文展に出品した男性裸体像《闇》は展示に際し官憲(今でいう警察官)から修正を求められ「彫刻の去勢」として風刺画が描かれるほど話題となりました。
朝倉彫塑館ではこれら貴重な作品の数々を観覧することができます。

エントランス展示作品「雲」

エントランス展示作品「雲」

展示室は個々の作品が実にゆったりとしたスペースに配置されていて、筆者が墓守という作品を目の当たりにした際「優しそうな老人と広い空間に二人きり」という感覚に囚われ思わず目を背けてしまいました(コミュ障全開)。否、作品はそれほどリアルな造形美なのです。

猫好きの猫好きによる猫好きのためのオリンピック

朝倉文夫は東京美術学校時代、モデルを雇う資金がなかったため上野動物園でひたすら動物のスケッチしていました。そのうち動物像の注文制作を始め、一日一体のペースで卒業までに1200体以上作成したそうです。そのため動物に関する作品も多く残っていますが、中でも猫は大のお気に入りで(自宅には15~6匹の猫を飼育していたそうです)「のび」は猫の一瞬をつぶさに観察・表現し、とても愛くるしい作品となっています。

左「追羽子」右「のび」(購入のポストカードより)

左「追羽子」右「のび」(購入のポストカードより)

また、朝倉文夫は1964年の東京オリンピックに向けて猫に関する作品を100種類仕上げ「猫百態(ねこひゃくたい)展」を開催することを企画してました。しかしオリンピックを目前に自身が亡くなってしまったため開催は叶いませんでした。2020年は2度目の東京オリンピック。朝倉文夫の猫作品を集めた企画展示が再び行なわれることを切に願います。

「朝倉彫塑館」は自身の最高傑作

朝倉彫塑館は1935年に朝倉文夫自ら設計・監督により竣工しました。そのとき朝倉文夫24歳。当初は小さな建物でしたが、増改築を繰り返し構想から7年の歳月をかけて現在のような形に建てかえたそうです。ここで彼は「朝倉彫塑塾」を開き、多くの門下生を育成・排出しました。

屋上庭園の作品は入口からも見えます

屋上庭園の作品は入口からも見られます

木造でできた住居の中心には中庭があり朝倉文夫の自然への美意識の高さを感じられます。コンクリート造りのアトリエ棟には屋上庭園にもたくさんの自然を感じることができ、今ではスカイツリーが見える展望となっています。
天井高8.5メートルのアトリエにはたくさんの窓が配置され、外の光を多く浴びた朝倉文夫の作品がいきいきと展示されています。この「朝倉彫塑館」こそ、朝倉文夫の最高傑作だと思います。

やっぱりあった猫グッズ

お土産コーナーにも猫をモチーフにしたグッズが多くありました。メモ帳、トートバッグ、ハンカチ、そして作品のポストカードも多くありました。ポストカードの中には猫に囲まれた朝倉文夫の写真があり思わずほっこり。※商品購入は希望の商品番号を紙に書いて受付に提出する注文方法となってます。

手提げ袋も猫のあしらい

手提げ袋も猫のあしらい

お得な年間パスポート・イベント

「朝倉彫塑館」には年間パスポート制度があります。価格は1,000円と格安。1回の入館料が500円で、定期的に展示替えもあるので年2回行けば元が取れる(?)お財布に優しいパスポートですね。そして2017年は2月と3月に普段は公開していない地下室などを観覧できるバックヤードツアーが行なわれるということで、筆者も参加することにしました。朝倉文夫の最高傑作「朝倉彫塑館」は色んな意味でまだまだ奥が深そうです(バックヤードツアー参加のご報告は後日させていただきます)

追記:バックヤードツアーに参加してきました!

『朝倉彫塑館(あさくらちょうそかん)』バックヤードツアーレポート
以前にもご紹介しました「朝倉彫塑館」。東洋のロダンとも言われた朝倉文夫が住居兼アトリエとして使用したこの建物は、展示品だけでなく国の有形文化財としてまた敷地全体は国の名勝に指定されています。一般公開は建物内ごく一部ですが、今回バックヤードツアーに参加し特別に朝倉彫塑館の地下室と中庭に入ることができました。ツアーは事前申込みが必要ですが参加費は無料(別途入館料要)。規模は最大人数5名、所要時間は10分程度という小さなものでしたが、その見応えは十分でした。朝9時20分、表門前に集合。普段は作品展示もされているアトリエ部分から入場しますが、今回は非公開とされている住居部分の勝手口へと案内されツアーがスタートしました。

朝倉彫塑館 / 基本情報

場所:東京都台東区谷中7丁目18番10号【地図
開館時間:午前9時30分~午後4時30分 (入館は午後4時まで)
休館日:月・木曜日(祝日と重なる場合は翌日)、年末年始、展示替え等のため臨時休館することがございます
※靴を貸し出しの袋に入れて入館となります。履き脱ぎしやすい靴をおススメします。スリッパなど施設の安全上用意はないので汚れが気になる方は替えの靴下を忘れずに持参しましょう。

観覧料
当日券 団体券
一般 500円 300円
小・中・高校生 250円 150円
年間パスポート 1,000円  ―

台東区立朝倉彫塑館公式サイト
http://www.taitocity.net/zaidan/asakura/

館内の雰囲気や作品は「朝倉彫塑館ダイジェスト」でもご覧いただけます。