『アルチンボルド』展 鑑賞レポート!見どころや混雑状況、アルチンボルドメーカー、おねんど作品など!

アルチンボルド展

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2017年6月20日から上野の国立西洋美術館で「アルチンボルド展」が開催されています。果物や野菜、魚や書物といったモチーフを組み合わせた肖像画で有名なアルチンボルド。彼の作品はエルンストやダリらシュルレアリストなど、多くのアーティストに影響を与えています。今回は日本初となるアルチンボルドの展覧会について、見どころや会場の様子などをレポートします。

「アルチンボルド展」会場の様子と混雑状況

アルチンボルド展 会場入口

アルチンボルド展 会場入口

筆者は平日(日中)と土曜日(夜間)の2回鑑賞しました。混雑は土曜日(夜間)の方が圧倒的に少なくおすすめです。なお、夜間営業は毎週金曜・土曜日のみ午後9時まで行われています。

展示内容は約80点とやや少なめですが、個々の作品描写が緻密なので、じっくり鑑賞できる展覧会です。筆者は音声ガイドを利用しながら2時間くらいかかりました。
音声ガイド(レンタル520円)は俳優の竹中直人さんがアルチンボルドに扮してナビゲートされています。低音VOICEが素敵です!

「アルチンボルド展」の見どころ

本展は全7章で構成されています。
第1章~第2章では初期からハプスブルグ家で宮廷画家として活躍した時代の作品、第3章~第4章はハプスブルク家のコレクションについて、第5章~第7章では寄せ絵など「騙し絵」を中心に展示されています。
それではアルチンボルド展の魅力について一部をご紹介します。

アルチンボルドとは

ミラノ出身のジュゼッペ・アルチンボルドはウィーン・プラハのハプスブルク家に仕えた宮廷画家です。1562年、アルチンボルドはフェルディナント1世のころ宮廷画家となり、後にその息子のマクシミリアン2世、孫にあたるルドルフ2世と神聖ローマ帝国の皇帝3代に渡って寵愛されました。

アルチンボルドを語る上で重要な作品と言えば、本展出品の「紙の自画像(紙の男)」です。その名の通り「紙」を幾重にも重ねたような自画像は、商売道具を寓意的に描くことで「我こそ画家!」という彼の自信を現しているように思えます。

紙の自画像(紙の男)
紙の自画像(紙の男)
出展:エンタメ特化型情報メディア スパイス

また作品には2種類の数字が刻まれています。首に1587、額には61。これは描かれた年代と自身の年齢を示しており、アルチンボルドの出自を知る資料としても貴重な作品です。

アルチンボルドの傑作「四季」・「四大元素」

何と言っても本展の目玉は、連作「四季」と「四大元素」です。
「四季」は「春」「夏」「秋」「冬」。
「四大元素」は「大気」「火」「大地」「水」の各4作で構成されています。
これらは1569年、アルチンボルドが君主神聖ローマ皇帝マクシミリアン2世に新年の贈り物として捧げたものです。

連作「四季」。左から春、夏、秋、冬。
連作「四季」。左から春、夏、秋、冬。
出展:アルチンボルド展 公式サイト

「春」は花、「夏」は野菜、「秋」は果物、「冬」には枯れ木。
「大気」は鳥、「火」は炎に関する道具、「大地」は動物、「水」は魚といった形でそれぞれのモチーフを組み合わせ擬人像を表現しています。

遠目には肖像画、凝らせば静物画という、そのインパクトが先行してしまう作品ですが、生物の特徴を細密に捉えたアルチンボルドの観察力、そして油剤で描かれたとは思えない技術力にも注目です。

また「四季」と「四大元素」は対を成す作品と言われています。
「春」と「大気」、「夏」と「火」、「秋」と「大地」、そして「冬」と「水」。
それぞれを並べると作品(肖像)が対話するように設計されています。

対となる四季(冬)と四代元素(水)
対となる四季(冬)と四代元素(水)
出展:アルチンボルド展 公式サイト

時を意味する「四季」と世界を構成する「四大元素」を通し、アルチンボルドは永遠の時の循環を通して世界を支配、万物に調和をもたらすものとして献上しました。これには皇帝も歓喜したそうです。
絵の中にはアルチンボルドの名、マクシミリアン2世のイニシャル、ハプスブルク家の当主の証である金羊毛騎士団なども描き込まれており、意味を読み解く楽しさも本作見どころの1つです。

なお「四季」と「四大元素」は美術館や個人等、所蔵が異なるので一堂に介する本展は又と無い機会と言って良いでしょう。

宮廷のアートディレクター

ルネサンス期以降、ヨーロッパの王侯たちは自身の権力を誇示するための「祝祭」を行っていました。アルチンボルドは絵画のほか、これら行事の企画演出でも才能を発揮します。本展ではルドルフ2世が催す「騎馬試合」に先駆けた衣装デッサンが数点展示されています。

キャプション(購入の図録より)

馬にまたがる騎士(購入の図録より)

デザインは奇抜ですが、服飾や工芸家が作品を具現化できるように細かく描いています。当時の宮廷祝祭を知ることが出来る貴重な作品です。

レオナルド・ダ・ヴィンチとアルチンボルド

西洋美術史の重要人物、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
彼の自然観察を重視する姿勢や陰影法などは多くの画家に影響を与えました。これらダ・ヴィンチに倣った画家たちを「レオナルデスキ」と呼びます。
父の友人にレオナルデスキが存在していたため、アルチンボルドも間接的にダ・ヴィンチの影響を受けます。
本展ではダ・ヴィンチ、レオナルデスキのスケッチや、人相学に基づいたグロテスクな人物の横顔などアルチンボルドも影響を受けたであろう作品が展示されています。

レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく《男女の頭部のカリカチュア》ペン、褐色インク/紙
レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく
《男女の頭部のカリカチュア》ペン、褐色インク/紙
出展:アルチンボルド展 公式サイト

ハプスブルク家の「驚異の部屋」

驚異の部屋」とは、15世紀から18世紀にかけてヨーロッパ(有力貴族の間)で作られた、珍品を集めた博物陳列室です。動植物のスケッチや剥製、アクセサリー、文献・道具などをコレクションしていました。

キャプション(購入の図録より)

ヤーコポ・リゴッツィ/タイ科の魚(購入の図録より)

これらはただの収集ではなく、世界の品々をひとところに集めることで権威を示すものでした。また博物館の前身となったシステムでもあります。

アルチンボルドは宮廷画家時代に「驚異の部屋」を見ており、動植物などを多くの観察を経て大作「四季」と「四大元素」を制作することができたと思われます。会場には「驚異の部屋」へ集められた鳥や魚のデッサンなどが展示されています。

アルチンボルドメーカー

会場の入り口では自分の顔をアルチンボルド風に描いてもらえる「アルチンボルドメーカー」が設置されています。撮影可能エリアということもあり連日行列ができるほどの人気です。

筆者の顔はこんな感じになりました(笑)

筆者の顔はこんな感じになりました(笑)

カメラが人の顔を認識し、コンピュターグラフィックスで作品「庭師/野菜」風に組み立てるこのコーナー。全部で3台設置されています(開催当初は2台でした)。

おねんどお姉さん×アルチンボルド

アルチンボルドメーカーと同じスペースにはEテレの番組で「おねんどお姉さん」としても知られる岡田ひとみさんの作品が展示されています(撮影可能)。

おねんど作品

「おねんどお姉さん」こと岡田ひとみさんの作品。左から「ちいさな、秋」「誘惑」「今夜はカレーライス」「胃もたれ」「ビタミンB2」※筆者撮影

アルチンボルドの寄せ絵をイメージした作品は「粘土」とは思えないクオリティです。また、館内の特設ショップでは同作品のポストカードも販売されています。

「アルチンボルド展」の公式グッズ

アルチンボルド展 特設ショップはとにかく華やか!

アルチンボルド展 特設ショップは華やか!

アルチンボルド展のグッズは、作品の色彩も伴って華やかでおしゃれな商品が多く、プレゼントにも喜ばれそうです。

主なグッズ一覧

  • 図録 2,800円
  • アートソックス 2,386円
  • かりんとう 576円
  • オリジナルハンドタオル 972円
  • トランプ 1,512円
  • ロールメモ 864円
  • デザインクリアボトル 1,404円
  • フェイスパック 500円
  • マグネット 540円
  • トートバッグ 864円
  • 貼って描けるアルチンボルド「春」マスキングロールステッカー 1,080円
  • マスキングテープ 432円
  • ふせん 454円
  • ポスター 756円
  • Tシャツ 2,160円
  • フラワーキャンディー 367円
  • フリーズドライ 1,566円
  • 野菜チップス 886円

連作「四季」と「四大元素」をはじめ、アルチンボルドの作品が一堂に介する世界的にも又と無いチャンスをお見逃しなく!

「アルチンボルド展」チケット / 基本情報

開催期間:2017年6月20日(火)~2017年9月24日(日)
開館時間:9:30-17:30(入館は閉館の30分前まで)
毎週金・土曜日:午前9時30分~午後9時(ただし6月23日、24日は午前9時30分~午後8時)
休館日:月曜日(ただし、7月17日、8月14日、9月18日は開館)、7月18日(火)
会場:国立西洋美術館

観覧料
当日券 前売り券 団体券
一般 1,600円 1,400円 1,400円
大学生 1,200円 1,000円 1,000円
高校生 800円 600円 600円

「アルチンボルド展」公式サイト
http://arcimboldo2017.jp/