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2017年6月2日より渋谷のBunkamura Galleryで「塩谷亮 展 -瞬く間にひそむ叙情を求めて」が開催中です。塩谷氏は1975年東京都生まれ。1998年に武蔵野美術大学/造形学部油絵学科を卒業され、在学時より公募展やグループショーなどへ出品。後に文化庁新進芸術家海外派遣研修員としてフィレンツェに滞在し、古典絵画の模写を通じてリアリズムを学んだ経歴を持つ日本人画家です。
昨年にはNHK Eテレの日曜美術館「謎のヌード クラーナハの誘惑」の回に出演され、クラーナハの技法を再現。その圧倒的なデッサン力は話題となりました。
本展は自身初の画集刊行を記念した7年ぶりの個展で、旧作から新作まで約25点を展示・販売されています。今回はその模様についてレポートいたします。
記事目次
「塩谷亮 展」会場のようす
本展は入場無料です。会場のBunkamura Galleryは渋谷という立地を忘れさせるような静けさで、気軽に入れる雰囲気でした。混雑は特段ありませんが常に数名が入退場していた印象です。展示作品は写真撮影が可能(ただしSNSなどメディアへの拡散使用に限る)で、日によっては塩谷氏ご本人がいらっしゃることもあります。展示作品の多くは購入が可能です(すでに売約済みの作品もありました)。
「塩谷亮 展」のみどころ
塩谷氏絵画の魅力は圧倒的なリアリズムにあります。作品は比較的人物を描いたものが多いのですが、それらを目の当たりにするとキャンバスと鑑賞者の間にある「隔たり」が無くなっていく感覚に陥りました。
- 手を伸ばせば髪を撫でることが出来るのではないか?あるいは
- 皮膚に浮き立つ静脈に耳を当てると、血流が聞こえるのではないか?
平面に描かれているはずのモチーフにそんな「生命の息吹」を感じざるを得ませんでした。
意地悪にも「油絵らしさ」つまり粗を探してみたのですが、素人目に確認することは不可能でした。優しく柔らかくそして果てないリアリズム、塩谷絵画の真骨頂です。
目に見えないものを描く
塩谷氏の作品の特長は、視覚では捉えることの出来ない「空気感」を表現されていることだと思います。湿度・緊張・人から発せられるオーラなど、その場にある全てを描き切っている様は、黒田清輝の『智・感・情』を彷彿させます。
日曜美術館ファン必見の作品!
会場には冒頭でもお話しした「日曜美術館」出演時の作品も展示されていました。
日曜美術館ファン、クラーナハファンにも必見の個展となっています。
「塩谷亮 展」関連書籍
今回の個展は塩谷氏の初の画集刊行を記念したものとなっています。画集は2017年6月13日発売ですが、個展では一足先に購入が可能です。他、関連書籍の販売もされていました。
■画集:4,104円
■「写実絵画とは何か?」:1,944円
生活の友社
売り上げランキング: 100,450
■美術の窓:1,646円
画家・塩谷亮氏の魅力
筆者が来場した当日も塩谷氏がお見えになっていました。コミュ障全開の筆者が恐る恐る声をかけると、気さくにお話をしてくださいました。
また畏れ多くも作品に関する質問にもお答えくださいました(感激・・!)
作品における「制作期間」について尋ねると・・
「10号サイズだと1ヵ月くらいです。大きい作品になると制作途中でしばらく寝かせることもありますね。そうすることで作品に深みが出てくるのです」
作品を寝かす(間を置く)ことがあると仰る塩谷氏。まるでワインのような製作工程で独自の作風が醸し出されているのかもしれません。
ちなみに本展には「17歳のシモーネ」という作品が展示されています。
このモデルとなったシモーネは、塩谷氏がイタリア留学の際に下宿先していた大家の息子さんです。シモーネ13歳の頃、作品「光韻」(本展には展示されていません)でモデルをつとめます。2016年には別の作品制作のため、改めてモデルとして来日するなど親交の深い人物です。このようにモデル(というか人)との距離感を大事にしている塩谷氏だからこそ素晴らしい作品を生まれるのだと、僭越ながらご本人を目の前に感じました。
コンピューターグラフィックスが主流になっている昨今、油絵にしかできない表現で挑戦し続ける塩谷亮氏の個展。会期も短いのでこの機会をお見逃しなく!
っていうか筆者も1作品欲しいっ!!
「塩谷亮 展 -瞬く間にひそむ叙情を求めて」基本情報
開催期間:2017年6月2日(金)~13日(火)
開館時間:10:00~19:30
会場:Bunkamura Gallery
料金:無料
塩谷亮展 Bunkamura公式ページ
http://www.bunkamura.co.jp/gallery/exhibition/170602shiotani.html
塩谷亮 公式サイト
http://www.ryoshiotani.com/