「バベルの塔」展 レポート!混雑状況や公式グッズ、プレミアムナイト鑑賞会など

ブリューゲル「バベルの塔」展

東京都美術館での開催はすでに終了しています

2017年4月18日より東京都美術館で「バベルの塔」展が開催中です。16世紀に活躍したオランダの画家「ピーテル・ブリューゲル」の最高傑作と評される「バベルの塔」。日本での公開は24年ぶりということで会期前から話題となっています。

今回は本展の混雑状況や公式グッズ、別日に行われた「プレミアムナイト鑑賞会」についてレポートします。

「バベルの塔」展の様子と混雑状況

筆者は平日の日中に来場。入場制限こそありませんでしたが、人気の展覧会ともあって会場内は混雑しており、鑑賞には(音声ガイド利用で)2時間30分ほどかかりました。また鑑賞に時間を要する小さいサイズの作品(銅版画など)も多かったため、ほかの展覧会と比べ人の流れは遅い印象でした。

最新の混雑状況は以下、公式Twitterでも確認できます。

音声ガイド(レンタル料金:520円)はナレーターに声優の森川智之さん、ゲストナビゲーターにアナウンサーの雨宮塔子さんを迎え、所要時間約30分の内容となっています。また本展の公式キャラクター「タラ夫」もボーナストラックで登場するので(声、すごく・・陽気です)オススメです。

また会場入口では子供向けのプログラムとして「とびらボード」の無料貸出しを行っています。これは磁気式のお絵かきボードで、気に入った作品をその場でスケッチすることができ、親子でも楽しめる展覧会となっています。

会場入口で貸出されている「とびらボード」

会場入口で貸出されている「とびらボード」

「バベルの塔」展の見どころ

本展は全8章で構成されています。1~4章では16世紀ネーデルラント(現在のベルギー、オランダ、ルクセンブルクの3か国にあたる地域)の作品、5章でヒエロニムス・ボスの作品、6~7章では模倣されたボス風の版画とブリューゲルの版画、そして最後の章でブリューゲルの「バベルの塔」が展示されています。

16世紀ネーデルラントの至宝

まず会場に入ると16世紀ネーデルラントの彫刻の数々が鑑賞者を出迎えます。
祭壇彫刻として造られたこれらの作品は、木彫でありながら豪華さを演出するため金属風の色彩が施されていました。しかし19世紀になるとフランスによるオランダ侵攻など世界情勢の悪化も受けて(?)多くの作品が売却され、その際に人物や場面ごとに切り分けられたり、色彩や塗装もはがされてしまったという歴史があります。

そのような状況下にも関わらず当時の色彩を保つ「跪く使途」や、祭壇彫刻には珍しく制作者名が刻まれている「四大ラテン教父の像」など本展には貴重な作品が数多く出品されています。いずれの彫刻も人物の表情や衣服のたゆみなど500年も前の作品とは思えない写実的な表現が特徴です。

続いてキリスト教絵画の展示です。
同時期に制作された宗教絵画も極めて写実的で、ディーリク・バウツの作品「キリストの頭部」はその慈悲深い眼差しや衣服の刺繍、宝石の透明感など油絵を薄く塗り重ねることで細密に描き切っていました。

ディーリク・バウツ作「キリストの頭部」購入の図録より

ディーリク・バウツ作「キリストの頭部」購入の図録より

当時の宗教画は布教の際、文字の読めない人々にもわかりやすく伝えるために用いられました。そのほとんどは人物(聖人など)を主体に描かれたものでしたが、16世紀に入ると画家たちは新しい試みをはじめます。

ヨアヒム・パティニール作「ソドムとゴモラの滅亡がある風景」ではキャンバスに燃え盛る町並みを大きく描き、聖書に登場する主要人物は右端に添える程度となっています。このような「風景画」の先駆けともいえる場面構成は当時としては画期的なもので、それまでの宗教画にはみられない作風に人々の関心も高まりました。

ヨアヒム・パティニール作「ソドムとゴモラの滅亡がある風景」購入の図録より

ヨアヒム・パティニール作「ソドムとゴモラの滅亡がある風景」購入の図録より

ヒエロニムス・ボス – ブリューゲルに影響を与えた奇想の画家

第5章ではヒエロニムス・ボスの作品が展示されています。ヒエロニムス・ボスはネーデルラントが生んだ最も有名な画家の一人で、作風の独創性から「奇想の画家」と呼ばれています。

ボスの作品の多くはキリストの受難と聖人の姿を描いています。「聖クリストフォロス」でもキリストを背負う巨人クリストフォロスの姿を描いていますが、細部には彼の世界観がちりばめられ何とも独創的です。
キリストの暗喩である杖に吊るされた魚、背後の木の水差しにはハシゴがかけられ中では火を取り囲んで宴会をする人々、木にかけられる熊、衣服を脱ぎ捨て逃げる男、城から顔を出すドラゴンなど・・・奇抜で謎めいた表現の数々に目を奪われます。

ヒエロニムス・ボス作「放浪者」(左)と「聖クリストフォロス」(右)

ヒエロニムス・ボス作「放浪者」(左)と「聖クリストフォロス」(右)

一方で、当時の日常生活を題材とした「放浪者(行商人)」のような作品もあります。中心となる人物はキリストでも聖人でもなく、ボロボロの衣服をまとった行商人の男です。背後の建物は娼家でその周辺に描かれる人物の表情と行動は不穏な雰囲気です。男が娼家から出てきたのか、娼家の人々に辛辣な言葉を投げかけようとしているのか、あるいは見て見ぬふりをしているのか・・詳細は定かではありませんが、鑑賞者の心理状態によって印象の変わる絵画のように思えました。

宗教画から風俗画そして奇抜なものまで、幅広いジャンルに挑戦したボスの作品ですが、現在その存在は25点しか確認されていないそうです。本展ではその中より上述2点を鑑賞できる貴重な機会となっています。

人気画家ボスの影響とブリューゲルの版画

ヒエロニムス・ボスは数名の助手を雇い絵画工房を運営してました。1516年にボスが亡くなったあとも助手によって工房は引き継がれますが、ボスの名声にあやかろうと彼の様式やモティーフを使って作品を模倣・コピー制作する者が現われます。

本展ではボスの作品を模写した油彩画「東方三博士の礼拝(作者不詳)」など、ボス風の作品も展示されているので本物と見比べてみるのも一興です。

ボス没後50年を経ると版画における「ボス・リバイバル」が本格化します(一周回って面白い!ってやつですね)。版元のヒエロニムス・コックは、版画に「創案者」としてボスの名を刻み、ボスの精神や様式に倣って他の画家に下絵を描かせ、銅版画制作者に仕上げさせました。

下絵を描いた画家の中でもピーテル・ブリューゲルの作品はボスに基づいた怪物や悪魔が数々登場し、その狂気に満ちた作風から「第二のボス」と呼ばれるようになります。

会場ではブリューゲルの版画より「聖アントニウスの誘惑」や「七つの大罪」、「野うさぎ狩り」など、代表的な作品が展示されています。

ブリューゲル作「七つの大罪/大食」購入の図録より

ブリューゲル作「七つの大罪/大食」購入の図録より

中でも展覧会公式キャラクター「タラ夫」の元となった作品「大きな魚は小さな魚を食う」はブリューゲルがネーデルラントの「ことわざ」を表した作品です。
音声ガイドのボーナストラックでは、これらもタラ夫が解説してくれました。

ブリューゲル作「大きな魚は小さな魚を食う」購入の図録より

ブリューゲル作「大きな魚は小さな魚を食う」購入の図録より

ピーテル・ブリューゲル作「バベルの塔」

ピーテル・ブリューゲル作「バベルの塔」

ピーテル・ブリューゲル作「バベルの塔」

バベルの塔」とは旧約聖書「創世記」に登場する神話上の建築物です(諸説あり)。

全ての地は、同じ言葉と同じ言語を用いていた。東の方から移動した人々は、シンアルの地の平原に至り、そこに住みついた。そして、「さあ、煉瓦を作ろう。火で焼こう」と言い合った。彼らは石の代わりに煉瓦を、漆喰の代わりにアスファルトを用いた。そして、言った、「さあ、我々の街と塔を作ろう。塔の先が天に届くほどの。あらゆる地に散って、消え去ることのないように、我々の為に名をあげよう」。

旧約聖書 「創世記」11章1-9節より

要は巨大な塔を以て神に近づこうとした人類が天罰(塔の崩壊、そして互いの言語を聞き分けられなくなった)を喰らうという「バビル二世」とは全く関係の無い話です(そりゃそうだ)。

この神話を元に建設途中の風景を描いたピーテル・ブリューゲル作「バベルの塔」は、資材を運ぶためのクレーン、足場、建設を生業に塔の中で暮らす人々の様子など、人類創世記の縮図が緻密に描かれていました。

構図はキャンバスの中心に巨大な塔を据え、背景に地平線まで見渡すパノラマを描くことで、彼方から眺めているような錯覚に陥る壮大なスケールです。1568年頃の作品であるにも関わらず、色彩は濃くはっきりとした濃淡です。階が上がるにつれ赤くなっていくグラデーションはレンガの新しさを表現したものだそうです。

ブリューゲルの油彩画もボス同様少なく(世界に40点ほど)特に木の板に描かれた作品は、他の美術館へ貸し出すことはめったにないそうです。本作「バベルの塔」が今後来日する可能性はとても低いため、鑑賞するチャンスを逃さないようにしましょう。

プレミアムナイト鑑賞会

美術館学芸員によるレクチャーの様子

美術館学芸員によるレクチャーの様子

別日に開催された「プレミアムナイト鑑賞会」にも参加してきました。約200名の限定鑑賞会です。開催時間は美術館閉館後18:00~20:00という短い時間でしたが、普段なら二重三重の人垣であふれる「バベルの塔」も最前列正面でゆっくり鑑賞することができました。

別途設けられた学芸員のレクチャーではキャプションや音声ガイドだけでは知りえなかった作品の見どころや鑑賞方法について教えていただきました。
帰りには図録(またはグッズ)をお土産にいただき、ドリンクサービスまで付いてとても有意義な時間を過ごせました。

「バベルの塔」展 プレミアムナイト鑑賞会 概要

  • 特別開室(18:00~20:00)
    閉室20分前まで入場可。時間内なら何度も鑑賞できます。
  • 東京都美術館学芸員によるレクチャー(18:00~18:20)
  • 展覧会公式図録、もしくはオリジナルグッズ引き換え
    オリジナルグッズはピンズ、バンダナ、ペーパーナプキン、大判ポストカードの詰め合わせ。
  • ドリンクサービス(18:00~20:00)
    スパークリングワイン、ソフトドリンクの提供

展覧会公式キャラクター「タラ夫」のグリーティング

ブリューゲルの作品「大きな魚は小さな魚を食う」から誕生した本展の公式キャラクター「タラ夫」。魚に足が生えていることだけでも充分な衝撃なのにさらにすね毛と靴下までついてきています。「ゆるい」もしくは「キモイ」キャラクターですがどことなく憎めない。タラ夫とグリーティングができる「塔の日(10の倍数の日付)」があると聞き、実際に会ってきました。

展覧会公式キャラクター「タラ夫」

展覧会公式キャラクター「タラ夫」

すごい・・ただただすごいよね!(白目)

作品から生まれたキャラクターが実写登場する例は近年多くみられますが、その中でも異彩を放つキャラクターです。SNSによる情報発信もタラ夫自身が行っているという体で驚きの活用方法です(笑)。

タラ夫@「バベルの塔」展 公式Twitter
https://twitter.com/2017babel

バベルの塔展に行くなら是非会っておきたいキャラクターです!

東京藝術大学COI拠点とのコラボ作品

クローン文化財の技術により立体化したバベルの塔

クローン文化財の技術により立体化したバベルの塔

「バベルの塔」展の開催中、東京藝術大学では「Study of BABEL」展と題してバベルの塔を立体模型化した作品を公開しています。科学分析結果を元にクローン文化財として再現されたバベルの塔は、高さ3メートル超えで圧巻のリアリティです。

また同作品はプロジェクションマッピングの技術を取り入れ、映写された人間が塔内で働いているシーンを鑑賞できます。なお、会場に設置されているタブレットで顔をスキャンするとその内の一人が、自身となって投影されるという面白い仕掛けも用意されていました。ちなみに筆者の顔をした人物は塔の中で寝転がっていました(現実かよ)。

Study of BABEL展
開催期間:平成29年4月18日(火)~平成29年7月2日(日)月曜日休館(ただし、5月1日は開館)
開館時間:9:30~17:30(金曜日は20:00まで)
会場:東京藝術大学Arts & Science LAB.1Fエントランスギャラリー
入場料:無料

「バベルの塔」展の公式グッズ

展覧会グッズコーナー

展覧会グッズコーナー

バベルの塔展では楽しいグッズが多数販売されていました。中でも筆者のおススメはバベルの塔限定シフォンケーキです。見た目のインパクトもさることながらとても美味でした。

主なグッズ一覧

  • 図録 2,500円
  • ポストカード 150円
  • ポストカード(6枚セット) 500円
  • トート 3,200円
  • A4クリアファイル 600円
  • ピンズ 680円
  • Tシャツ(額つき) 3,600円
  • スノードーム 780円
  • バンダナ 1,080円
  • マグカップ 1,500円
  • シール付きキャラメル 324円
  • タオル 550円
  • シフォンケーキ(数量限定) 1,400円
筆者購入のグッズ。左からタオル、キャラメル、シフォンケーキ(で、でかい)

筆者購入のグッズ。左からタオル、キャラメル、シフォンケーキ(で、でかい)

7月にはBunkamuraミュージアムで開催される「ベルギー奇想の系譜展」にもボスやブリューゲルの作品が展示がされそうで、まだまだ話題は尽きそうにありません。
奇想の画家とそれに影響された人々が織り成す「バベルの塔」展、是非その目に焼き付けて下さいまし!

「バベルの塔」展 チケット / 基本情報

開催期間:2017年4月18日(火)~7月2日(日)
開館時間:9:30~17:30金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし、5月1日(月)は開室)
会場:東京都美術館
※2017年7月18日~大阪にも巡回します:2017年7月18日(火)~10月15日(日)国立国際美術館

当日券 前売り券 団体券
一般 1,600円 1,400円 1,400円
大学生 1,300円 1,100円 1,100円
高校生 800円 600円 600円

「バベルの塔」展 公式サイト
http://babel2017.jp/