『ミュシャ展』レポート!混雑状況やスラヴ叙事詩の解説など

ミュシャ展

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東京六本木にある国立新美術館で2017年3月8日より「ミュシャ展」が開催されています。本展はミュシャ独自のデザイン性やチェコ国外では初となる「スラヴ叙事詩」の全作公開という内容も手伝って会期前から話題となり、多くの入場者が見込まれている展覧会です。今回は筆者が平日に鑑賞した会場の様子と、みどころなどをレポートします。

アルフォンス・ミュシャとは

現在のチェコ出身のアルフォンス・ミュシャはフランスの女優サラ・ベルナール主演の舞台「ジスモンダ」のポスター(本展にも出品)を手がけることで一躍有名となったアール・ヌーヴォーを代表する芸術家です。ミュシャが描くポスターは淡い色彩で女性や植物文様などで華やかにデザインされています。

日本においてミュシャの絵が紹介されたのは明治期で日本の西洋画壇にも衝撃を与え、当時の文芸誌『明星』では表紙絵にもインスパイア(むしろパクリ)されました。作品の数々は近年においても高い評価をされています。
本展では、彼が晩年(約16年間)を捧げた渾身の作「スラヴ叙事詩」を中心に約80点が展示されています。

「ミュシャ展」の混雑状況

撮影可能エリアの様子

撮影可能エリアの様子

平日金曜日の午前9時30分(開場は午前10時)に国立新美術館へ到着。筆者は事前に前売り券を購入していたのでそのまま入場列へ(チケットの無い方は売り場へ案内されます)。この時点で既に100人ほど並んでいましたので、前売り券の購入をおすすめします。

展示室は「スラヴ叙事詩」のエリア、映像コーナー、アールヌーヴォー期のポスター作品という区画に分かれています。筆者は音声ガイドをレンタルのうえ鑑賞したところ優に3時間はかかりました。
また本展は歴史背景の難しい作品が多いので音声ガイドは必須かと思います。

展示室は入場後30分もすると混雑してきました。ここでふと思い出したのは去年、東京都美術館で開催された『伊藤若冲』展です。若冲作品は掛け軸など比較的小さい作品が多く写実も繊細なため、多くの人が間近で見ようと立ち止まり、鑑賞の流れが滞ってしまいました。
しかし本展は「スラヴ叙事詩」エリアにあるような巨大絵画(6メートル×8メートル)がメインなので、全体を鑑賞するために作品と距離を置く必要があり、若冲展のような事態にはなっていませんでした(後半のポスター展示は作品サイズが小さくなるため若干混み合います)。

スラブ叙事詩エリアの一部は写真撮影が可能です。許可作品は「イヴァンチツェの兄弟団学校」「聖アトス山」「スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い」「ロシアの農奴制廃止」「スラヴ民族の賛歌」の5点です。上述の通り巨大作品なので写真撮影には広角レンズを用いると全体も撮りやすいです。また鑑賞には単眼鏡やオペラグラスなど持参されることをおすすめします。
筆者は順路通りに進みましたが、朝イチで人が少ない状況であれば先に撮影エリアを巡り、ポスターなどの後半の作品を見てからスラヴ叙事詩のエリアに戻るという経路も良いと思います。

「ミュシャ展」の見どころ

展示作品「聖アトス山」(撮影可能エリアに展示)

展示作品「聖アトス山」(撮影可能エリアに展示)

「スラヴ叙事詩」はミュシャ(展覧会ではチェコ語でムハと表記)が50歳で故郷に戻り晩年の約16年間を費やした一大プロジェクトです。故郷を愛し、人道主義者でもあった彼は、自由と独立を求める闘いを続ける中で、スラヴ諸国の国民をひとつにするために制作を開始しました。6メートル×8メートル、テンペラと油彩で描かれた20枚のスラヴ叙事詩はアールヌーヴォー期の商業デザインを重視した作品とは違う、感情的で写実を重視した作風となっています。ミュシャが本当に描きたかったこの「スラヴ叙事詩」20作がチェコ国外で全て揃うのは日本が初めてです。

有名なアール・ヌーヴォー期の作品も展示

ミュシャの名を有名にしたアール・ヌーヴォー期の作品も揃います。バレエの演目のための「ヒヤシンス姫」、ミュシャが得意とする女性と花を描いた「四つの花」シリーズなどのリトグラフや宝飾デザインをした蛇のブレスレットと指輪など、ベル・エポック(よき時代)と呼ばれる時代を象徴する作品が展示されています。

スラヴ叙事詩を鑑賞するために知っておこう

展示作品『スラヴ民族賛歌』(撮影可能エリアに展示)

展示作品『スラヴ民族賛歌』(撮影可能エリアに展示)

スラヴ叙事詩はミュシャの祖国が自由と独立を求めて闘う中でスラヴ民族のアイデンティティをテーマにした作品として制作しました。作品テーマの他、音声ガイドや解説パネルを読みましたが、筆者が世界史に疎いせいか内容はとても難しかったです。そこでスラヴ叙事詩を鑑賞する上で知っておきたい言葉をピックアップしてみました。

スラヴ民族

スラヴ人は中欧・東欧に居住しスラヴ語に属する言語を話す民族集団で東スラヴ人西スラヴ人南スラヴ人に分けられます。ミュシャの出身であるチェコは西スラヴ人に所属します。西スラヴ人の居住地には、12世紀ごろから西方のドイツ人による東方植民が行われ、チェコもその対象となった背景があります。西スラヴ人はチェコ以外にもロシアやポーランドなどの国々にも存在します。「スラヴ民族はチェコ人だけではない」ということを頭に入れるとテーマである「民族のアイデンティティ」をより理解しやすいかと思います。

チェコの宗教の歴史

チェコの宗教の歴史は9世紀頃まではスラヴ神話が主流でした。8世紀から10世紀にかけて徐々にキリスト教(カトリック)に改宗する人が増えていきます。15世紀に宗教改革者ヤン・フスによる宗教改革がきっかけとなり、多くのチェコ人はフス派の信者になっていきます。スラヴ叙事詩にはスラヴ神話の神や宗教改革の様子が多く描かれます。

ヤン・フス

ヤン・フスは宗教改革者で、スラヴ叙事詩でも多く出てくる人物です。カトリック教会の贖有状を批判、聖書だけを信仰の根拠としてプロテスタント運動の先駆者となった人物です。カトリック教会はフスを1411年に破門、その後杭にかけられて火刑に処されました。

・・民族や宗教の歴史が絡むと特に我々日本人には難しい内容となりますね。。

スラヴ叙事詩の中に潜むもの-ミュシャ・コード

展示作品「イヴァンチツェの兄弟団学校」(撮影可能エリアに展示)

展示作品「イヴァンチツェの兄弟団学校」(撮影可能エリアに展示)

スラヴ叙事詩の巨大な絵画を見ていると、平和や愛、悲しみ、あるいは恐怖など抽象的且つ、単純な解釈では片付かないように感じました。作中に必ず一人は居る「鑑賞者をみつめているような人物画」は表情だけでは何を伝えようとしているかは分かりません。他にも魔方陣、黒い服のスパイ、ローマの終焉の本、全身楔帷子(くさびかたびら)の人、空を覆う多くの鳥・・・よくよく見ると不可思議なものも描かれています。『民族のアイデンティティ』をテーマにしたスラヴ叙事詩ですが、もしかするとダ・ヴィンチ・コードならぬミュシャ・コード的な訴えが隠されているのかもしれません。

「ミュシャ展」の公式グッズ

グッズコーナーの列の様子

グッズコーナーの列の様子

グッズコーナーはこの規模の展覧会にしては狭く、人でごった返していました。そんな中、確認できたグッズは、図録、ポストカード、クリアファイル、Tシャツ、アイフォンケース、トートバッグ、マスキングテープ、チケットファイル、一筆箋、などです。ただ、スラヴ叙事詩のグッズは少なく、アール・ヌーヴォー時代のポスター作品をグッズ化したものが多かったです。レジ待ちには30分かかりました^^;

図録だけならば、Amazonでも購入できますので下記よりどうぞ!

ミュシャ展

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今年、西洋画では一番注目されているといっても過言ではない「ミュシャ展」。混雑こそしますが、メディアでの露出(宣伝)はまだ少ないので3月中の鑑賞がおすすめです!

「ミュシャ展」チケット/基本情報

開催期間:2017年3月8日(木)~6月5日(月)
開館時間:10:00~18:00(入館は30分前まで)
※毎週金曜日、4月29日(土)~5月7日(日)は午後8時まで
休館日:毎週火曜日(ただし、5月2日(火)は開館)
会場:国立新美術館 企画展示室2E

観覧料
当日券 前売り券 団体券
一般 1,600円 1,400円 1,400円
大学生 1,200円 1,000円 1,000円
高校生 800円 600円 600円

公式サイト
http://www.mucha2017.jp/