2018年3月31日から上野の東京藝術大学大学美術館で「東西美人画の名作《序の舞》への系譜」展が始まりました。
美人画の傑作と言われる上村松園作、『序の舞』。今回の展覧会は修復完了後はじめての一般公開となります。展覧会では松園の他、美人画の名手の作品が同時に展示されています。今回は東西美人画の名作展の見どころや会場の様子などをレポートします。
「東西美人画の名作展」会場の様子
筆者は初日の日曜日に会場を訪れました。作品の画面が大きいものが多く、ゆったりと鑑賞できました。混雑もさほど感じず、2時間程度で会場全体をみてまわることができます。
音声ガイドは無料で貸し出しをおこなっており、ナレーションは俳優の竹下景子さんと声優の土田大さんです。また、作曲家で東京藝術大学音楽学部教授・安良岡章夫さんによる選曲で作品にあわせた音楽を楽しむことができます。
音声ガイドのは電話のように耳にあてて聞くタイプのものとなっており、『序の舞』のシルエットが描かれた行灯の前で番号と再生ボタンを押すと解説がはじまるようになってます。ギャラリーツアー型の音声ガイドで、学芸員が寄り添って一緒に会場を巡るような感覚を楽しめます。

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「東西美人画の名作展」の見どころ
会場は全4章で構成されています。第1章では「美人画の源流」として、江戸時代の浮世絵を中心に展示されています。第2章では「東の美人」東京画壇、第3章では「西の美人」京都画壇の画家の作品を展示。最後の第5章で「美人画の頂点」として『序の舞』を中心に上村松園の作品が並びます。その中から筆者おすすめの展示をご紹介します。
美人画の源流

三畠上龍『燈篭美人図』(図録より)
美人画の源流をさかのぼると、江戸時代初期の風俗画までさかのぼります。男女混交で描かれている遊楽図、女性のみの舞踏図、そして一人の女性の立ち姿を描く美人図へ順を追って成立しました。
会場では鈴木晴信、鳥居清長、喜多川歌麿の美人画が揃っており、それぞれに個性的な美人が楽しめる展示となっています。
松園も代表的な浮世絵師に学びました。中でも三畠上龍の図案は松園も参照したとされており、展示作品『燈篭美人図』・『扇美人図』では構図など『序の舞』に繋がる点が見受けられます。
東の美人・西の美人

鏑木清方『たけくらべの美登利』(図録より)
東の美人の章では菱田春草、松岡映丘、山田敬中などの日本を代表する画家の美人画が揃います。中でも注目は「東の清方、西の松園」と謳われ、松園とともに美人画の二大巨匠とされた鏑木清方です。
清方の絵は艶っぽいものが多いですが、今回の展示されている『たけくらべの美登利』では遊女になる運命をもつ美登利に純真さを水仙の花とともに細い線で描いています。
西の美人の章では中村大三郎、北野恒富、甲斐庄楠音など個性的な美人画が展示されています。中でも菊池契月の『散策』は二匹の洋犬を連れた少女がグラビアのようにこちらに目線を向け歩いている構図はモダンな美人画として会場でも異彩を放ちます。
三大美人画の巨匠『三園』
京都には上村松園が美人画の名手として活躍していました。同時代に東京では池田蕉園、大阪では島成園という女性画家も美人画を多く描いていました。彼女たちはその名前から「三園」と称されており、今回の展示は三園の作品が揃っていることにも注目です。

池田蕉園『宴の暇』(図録より)
池田蕉園の展示作品『宴の暇』では風にあたり、酔いを醒ます遊女が描かれています。足をくずし、手すりによりかかって座る姿は色っぽさを感じます。一方、『さつき』という作品では端午の節句の少女を描いたものですが、幼さの少女が微笑んでます。『宴の暇』では大人の艶を、『さつき』では少女のあどけない表情を見事に描き分けています。

島成園『香のゆくえ』(図録より)
島成園の展示作品『香のゆくえ』は兜を抱きしめ夫を戦地へ送り出す妻の切ない思いが伝わる作品です。『美人愛猫』『春の愁い』でも、憂える女性特有の表情に美しさを感じる作品となっており、とても惹きつけられます。
東の美人、西の美人の後はいよいよ上村松園の登場です。
上村松園と『序の舞』

上村松園『序の舞』
明治8年(1875)、京都に生まれた上村松園は幼い頃に父親を亡くし母親の手ひとつで育てられました。のちに松園は「私を産んでくれた母親は、私の芸術までも生んでくれた」と語るほど母親は彼女に理解をしめします。母親の支援もあり、松園は10代の頃から絵の修行を始め、制作を重ねることで国内の展覧会や博覧会で受賞を重ねます。明治30年代には女性画家として地位を確立していきました。
今回の展覧会のメイン『序の舞』は近代美人画の最高峰ともいえるその芸術的、歴史的価値によって重要文化財に指定されています。
美人画の最高傑作
「この絵は私の理想の女性の最高のものといっていい、自分でも気に入っている「女性の姿」であります」と松園自らも傑作という『序の舞』。縦231.3cm、横115.5cmの大きな画面に一人の女性が描かれています。瑞雲文様の振袖、鳳凰をあしらった丸帯、髪は文金高島田を結い、能の中でも美しいといわれる《序の舞》の型が融合し、品のある作品となっています。
実際の作品を目の当たりにした筆者。ピンと張りつめた緊張感と品格の高い女性の姿は近寄りがたいものを感じました。『序の舞』は強く美しい女性の理想像なのかもしれません。
文化財の保存修復
強く美しい『序の舞』ですが、制作から80年近く経過している作品は経年劣化が目立っていました。絵の具の剥落やカビ痕・シミ、埃などが多く見られ、掛け軸に表装されていたことによる全体がたわみ、波打っていました。
2年近い修復でクリーニングを行い、絵の具の接着力を強め、掛け軸から額装に改装し、制作当初に近い状態で鑑賞できるようになりました。
修復の様子は会場の映像コーナーで知ることができます。美しい作品を通して文化財がどのようにして守られているか、是非ご覧ください。
グッズ
グッズは上村松園の『序の舞』、鏑木清方の『たけくらべの美登利』、菊池契月の『散策』を中心に展開しています。

『序の舞』アクリルスタンド
- ポストカード 162円
- B6ノート 486円
- 楊枝セット 864円
- 一筆箋 486円
- マグネット 648円
- コンパクトミラー 2,160円
- アクリルスタンド 918円
- ミニ色紙セット 1,620円
- A4クリアファイル 432円
- 筆入れ 3,456円
- 風呂敷 2,376円
- マルチクロス 864円
- メガネケース 1,944円
- キャンバスパネル 3,240円
- 豆皿 1,080円
東西の美人、そして至高の女性を愛でるチャンスをお見逃しなく!
「東西美人画の名作《序の舞》への系譜」展
開催期間:2018年3月31日(土)~2018年5月6日(日)
開館時間:10:00-17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(4月30日(月)、5月1日(火)は開館)
会場:東京藝術大学大学美術館
― | 当日券 | 前売り券 | 団体券 |
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一般 | 1,400円 | 1,300円 | 1,300円 |
大学生 | 900円 | 800円 | 800円 |
高校生 | 900円 | 800円 | 800円 |
「東西美人画の名作《序の舞》への系譜」展公式サイト