『暁斎・暁翠 旅と風景』河鍋暁斎記念美術館の企画展

暁斎・暁翠 旅と風景

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埼玉県蕨市にある河鍋暁斎記念美術館では企画展「暁斎・暁翠 旅と風景」展が開催されています。河鍋暁斎については以前の記事でご紹介した展覧会「これぞ暁斎!」展がテレビやSNSで話題となっており、私も暁斎ファンの一人として本美術館へ行ってきました。今回は企画展の様子をレポートします。

河鍋暁斎記念美術館について

河鍋暁斎記念美術館は蕨市の住宅街の中にあります。暁斎の曾孫である河鍋楠美が自宅を改装して設立した美術館です。下絵・画稿類を中心に3000点余を所蔵していますが、一度に展示できるのは40点ほどのため1~2ヶ月毎にテーマを替えているそうです。
蕨市は暁斎本人と直接関わりはありませんが1944年(暁斎の孫の代)河鍋家が戦火による強制疎開で居を移したため、この地での設立となりました。

筆者は平日昼より入場。「これぞ暁斎!」展とは異なり来場者は少なく(約10人程度)1時間ほどかけてゆっくり観覧ことができました。音声ガイドやキャプション(解説)等は作品近くに明示がありませんが学芸員より紙のレジュメをいただけます。

「暁斎・暁翠 旅と風景」展の見どころ

企画展「暁斎・暁翠 旅と風景」展

企画展「暁斎・暁翠 旅と風景」展

2017年3月1日(水)から4月25日(火)まで開催されている本展は暁斎とその娘、暁翠(きょうすい)の風景画を中心に作品展示がされています。両名はたびたび写生旅行へ行っていたそうです。

暁斎が生涯に描いたものは、動物画・風刺画・宗教画・幽霊画・春画など作品の種類は多岐に渡り、上述のとおり風景画も手掛けています。暁斎は風景画を極めるために幕末に信州へ、明治期には日光へ出掛け、数多くの写生を行いました。暁斎は風景画を極めるための旅行の動機を「高く険しい峰々が晴れたり曇ったりする様子、奥深く静かな谷間に漂う雲や霧、また激流が音を立てて岩間を走り、滝が清らかな玉を吐くかのように流れ落ちる深い山の景色などをこの目で直に写生したい」と「暁斎画壇」に記しています。
また本展出品の「日光地取絵巻 華厳滝・裏見の滝」では滝や山並みの描写に弟子のジョサイア・コンドルと自分自身の姿も描きんでおり、暁斎の愛らしい一面を感じることができます。

その他にも暁斎が描いた名所絵や版画もありました。文久3年(1863)第14代将軍・徳川家茂の「上洛」というビッグイベントにあわせて、江戸の版元23軒と絵師16名が力を合わせ、通称「御上洛東海道」という浮世絵のシリーズが出版されました。
これに暁斎も参加しており「田子浦蛇松」や「三保の松原」なども今回展示されています。

娘・暁翠は父親譲りの画力!

会場を進むと大きめな三幅の掛け軸が並んで展示されています。
暁斎の娘の作品「西行雪月花より 花」。
暁斎の作品「月次風俗図 三月 潮干狩り」。
暁斎の師匠である前村洞和の作品「阿須浦之図」です。
暁斎と前村洞和の作品を隣りあわせで比べることで、細かい筆致や荒々しい岩の表現が師匠譲りだとわかります。また娘の暁翠の作品は父親の激しい画風の影響を受けつつも、女性画家独特の線の細さや淡いタッチで描かれています。
洞和、暁斎、暁翠の3作品が一度に見れるのは河鍋暁斎記念美術館ならではでしょう。

他絵師と暁斎のコラボレーション作品も

本展では他絵師との合作(錦絵)も展示されています。「むさしや梅吉」では女性画を二代目歌川国貞、背景を河鍋暁斎が描いてます。他にも三代目歌川豊国、三代目歌川広重との合作も展示されています。

また「佃煮 柳はし みかはや」、「橘町三丁目松の家」は共に明治時期に作られたつくだ煮の商品ラベルで暁斎の風景画が使用されており、合わせて展示がされています。

暁斎画のインパクトが当時の企業、絵師たちにも大きな影響を与えた所以でしょうか。

河鍋暁斎記念美術館 カフェ&ミュージアムショップ

ホットココアを注文したら暁斎の印章をあしらった非売品のカップで出てきました

ホットココアを注文したら暁斎の印章をあしらった非売品のカップで出てきました

美術館にはカフェとミュージアムショップが併設しています。
喫茶スペース「cafe musee “の”」ではテーブルが3つと椅子が6脚用意されていました。メニューは飲物のみで、美術館に入館した場合は割引があります。暁斎の印章をあしらった非売品のオリジナルカップが一部使用されていてこじんまりとした可愛らしいカフェです。

ミュージアムショップでは図録や書籍、ポストカードなどの他、美術館オリジナルグッズとして一筆箋、クリアファイル、マグネットや今や希少のテレフォンカードも販売していました。企画展の風景画のグッズは少ないですが、暁斎の絵柄が活かされた魅力的なグッズが沢山用意されています。

筆者のおススメは「暁斎絵札」です。暁斎の絵画や署名を使ったオリジナル絵札で図柄は全16種類。内3種がランダムに1袋に入っている105円のものと、全種が1袋に入っている1,080円の2通りあります。

「暁斎絵札(3種入)」値段も手ごろなのでトレーディングカード感覚で集められま

「暁斎絵札(3種入)」値段も手ごろなのでトレーディングカード感覚で集められます

bunkamuraミュージアムでの「これぞ暁斎!」展では、神仏や異形の者、動物などの絵を多く鑑賞できましたが、今回の河鍋暁斎記念美術館では風景画という暁斎の画風の幅広さを改めて知ることができました。河鍋暁斎記念美術館は年中、暁斎の作品が見れるというのが最大の魅力です。今後も多くの企画も予定されており、また訪れたい美術館のひとつです。

「暁斎・暁翠 旅と風景」展 チケット/基本情報

開催期間:2017年3月1日(水)~4月25日(火)
開館時間:10:00~16:00(16:00まで入館可)
休館日:毎週木曜、3月26日~31日
会場:河鍋暁斎記念美術館

観覧料
当日券
一般 320円
学生(中~大学生) 210円
小学生以下 105円

公式サイト
http://kyosai-museum.jp/hp/top.html