『みなの衆 -東京藝術大学鍛金研究室で学ぶ-』宮田亮平氏監修の展覧会

みなの衆 -東京藝術大学鍛金研究室で学ぶ-

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文化庁長官(2017年2月現在)で金属工芸家でもある宮田亮平氏監修の「みなの衆 -東京藝術大学鍛金研究室で学ぶ-」展がLIXIL(リクシル)ギャラリーで開催されています。
筆者は兼ねてより宮田氏作品のファンで、中でもイルカをモチーフにした「シュプリンゲン」シリーズは大のお気に入りです。日本橋三越新館のエンブレムにもなってるのでご覧になった方も多いと思います。
本展は第1期(2016年12月15日~2017年1月19日)と第2期(2017年1月21日~2月25日)に分かれ、前期は多摩美術大学をはじめとする美大教授の鍛金作品の展示、後期では宮田亮平氏や東京藝術大学講師陣、そして造幣局装金課の作品が展示されています。今回は筆者が観覧した後期の模様と関連ワークショップへの参加についてレポートいたします。

「鍛金」とは?そして造幣局の作品が展示されている理由。

ギャラリー内は合計11点の作品が展示されています

ギャラリー内は合計11点の作品が展示されています

鍛金(たんきん)」とは一枚の板金を金槌で変形・加工させていく金属工芸技法でニューヨークにある「自由の女神像」もこの技法で作られています。身近なものでは刀や包丁を作る鍛冶も鍛金の一種です。東京藝大と鍛金の関わりは1895年、学内に研究室が開設されたことに由来します。過去120年の歴史では春日大社の銅燈籠の修復にも携わったそうですよ。
また「造幣局装金課」は内閣府からの依頼を受けて文化勲章や紫綬褒章など記章を制作している機関で、その職員「装金士(そうきんし)」が鍛金の技法で制作した作品も展示しています。この装金士は東京藝術大学で上級研修を行われている方々でもあります。

本展は観覧無料で写真撮影も可能なので、名工たちの作品を何度も、じっくりと鑑賞できるのが最大の魅力です。

三神慎一朗(東京藝術大学・助教)

三神慎一朗(東京藝術大学・助教)

橋本敦司(造幣局装金課・作業長)

橋本敦司(造幣局装金課・作業長)

真鍋直樹(造幣局装金課・係員)

真鍋直樹(造幣局装金課・係員)

出品作家らによるワークショップ「シルバーリング制作」

本展の関連イベント出品作家によるワークショップ「シルバーリング制作」にも参加してきました。参加費は材料費と指導料で8,000円と少々高めですが鍛金体験を東京藝術大学講師の元、受けられるとあって30~60代くらいまでの幅広い層が参加していました。

今回は「すり出しリング」という種類のシルバーリングを制作。素材は950銀という種類で銀と銅が1000:50の割合で配合されています。純銀と比べて多少黒っぽいですがほとんど見分けがつきません。

ワークショップの道具はプロ仕様

ワークショップの道具はプロ仕様

指輪のサイズをリングゲージで測り、平角線の銀をリングサイズ表をもとに糸のこぎりで切ります。切った素材の両端をやすりで整え、芯金という鉄の棒に銀板をあて、木づちで叩き全体を丸くします。鉄のハンマーではなく木づちを使うことで金属硬化を抑えているということでした。

芯金で丸い形を作ります

芯金で丸い形を作ります

ずいぶん歪んだ円形になってしまいましたが><講師が綺麗に調整してくださいました。

次は接合面を接続します。接合面にフラックス(糊のようなもの)をつけてその上に銀ロウという小さな銀を乗せます。そしてバーナーで燃やすと銀ロウが溶けて接合部に流れ込みます。熱くなった素材を水で急冷し、10%の希硫酸に浸けます。ここの作業は危険なので講師におまかせしました。希硫酸から取り出し繋ぎ目の余分なロウを剥ぎます。そして指輪を芯金に入れてと木づちを使い形を整えつつ指輪をサイズまでのばしていきます。
カーンカーンカーン”と甲高い金属音が響きほのかに鉄の匂いがする心地よさに思わず陶酔。「叩きすぎると薄くなっちゃうので気をつけてくださいね」と忠告が入るまで没頭してしまいました。。

芯金で形を整えました

芯金で形を整えました

いよいよすり出しの作業です。デザインを決めてすり出しをしていきます。

筆者はナット型のリングを作ることにしました

筆者はナット型のリングを作ることにしました

あとはひたすらヤスリで削ります。地味な作業ですがこれがなかなか難しい。真っ直ぐ削れない、細かい作業で手が痛む、デザインが近づいているか小さくてよく分からない、腹は減る・・(何)講師から「授業じゃないのでリラックスしてり休んだりしてください。お茶やお菓子もどうぞ」という願ったり叶ったりのお言葉を頂戴したので、まんまとお菓子に手をのばしました。

ヤスリの数々

ヤスリの数々

仕上げは磨きの作業。紙やすりで磨いていきます。まずは粗目400番を使用。次は600番、800番、1000番・・徐々に細かい目のヤスリを使用しますが後半は感覚だけの作業で、もはや修行の域です。

紙やすりも多くの種類が用意されています

紙やすりも多くの種類が用意されています

最後に研磨剤をつけて布でピカピカに磨きます。研磨剤を利用せずにマッドな感じのまま仕上げる方もいらっしゃいました。

無事完成!専用の入物もいただきました

無事完成!専用の入物もいただきました

13時に始まったワークショップは17時まで続きました。この体験の中で鍛金には技術のみならず続ける体力や精神力が必要だとわかりました。また作品を見るだけでは感じられない、金工作家の腕のたくましさや手先の細かさも近くで感じることができました。途中、宮田亮平氏も様子を見に来られとても貴重な体験となりました。

ワークショップ終了後の作品は迫力が増します(宮﨑瑞土ー東京藝術大学・教育研究助手)

ワークショップ終了後の作品は迫力が増します(宮﨑瑞土ー東京藝術大学・教育研究助手)

クリエイションの未来展 第10回 宮田亮平監修 「みなの衆-東京藝術大学鍛金研究室で学ぶ-」 / 基本情報

場所:LIXIL(リクシル)ギャラリー(東京会場)【地図

会期:2016年12月15日(木)-2017年2月25日(土)
第一期 2016年12月15日(木)~2017年1月19日(木)
第二期 2017年1月21日(土)~2月25日(土)

休館日:水曜日、12月28日(水)~1月4日(水)、1月20日(金)※建築・美術展のみ

開館時間:10:00~18:00

観覧料:無料

LIXIL情報ページ
http://www1.lixil.co.jp/gallery/contemporary/detail/d_003631.html

宮田亮平 公式ウェブサイト
http://r-miyata.com

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