かつて作家の川端康成が住居を構え、江戸川乱歩をはじめ数多小説の舞台にもなった場所「上野桜木(うえのさくらぎ)」。そこは東京国立博物館の先、上野の高台にある静かな住宅街で、最近では古民家をリノベーションした複合施設やレトロな喫茶店が軒を連ね、懐かしいけど新しい街としてテレビや雑誌でも多く取り上げられています。
中でも筆者のおすすめは上野桜木近くの谷中にある「ギャラリー大久保」。ここは古美術と喫茶を一堂に楽しめる芸術の街ならではのお店です。
創業100年の古美術店「大久保美術」
ギャラリー大久保を運営する「大久保美術」は大正2年から続く老舗で、茶道具を中心に和骨董など多くの古美術品を取り揃えています。
建物の一階はご本業の販売、二階ではギャラリー大久保として「茶室/瑜伽庵(ゆかあん)」と「喫茶(コーヒー&ティールーム)」スペースが併設されています。
好みの茶碗でお抹茶を
茶室/瑜伽庵は「立礼式(りゅうれいしき)」を前提に席が設けられています。立礼式とは椅子に腰かけて行う茶道の形式で、こちらでは畳に上がることなく飲食が可能です。スカートやブーツのまま、ちょっとした茶道体験ができるので女性にも嬉しい作法です。
瑜伽庵のメニューは一点のみですが、和菓子とお抹茶のセットがあります。価格も1,000円(税抜)とお手頃。お抹茶を注ぐ茶碗は、店内にある陳列棚から好みのものを選ぶことができます。いずれも店主の目利きにかなったものばかりで季節に合わせた選定もされているそうです。
セットの和菓子「水仙の練り菓子」も美しさ、味ともに実に上品で、菓子器には志野焼を用いるなど古美術店ならではの拘りを感じました。
筆者は河合瑞豊(かあいずいほう)の暦手(こよみで)という茶碗を選択。とても手になじむ触感でお抹茶の味も格別でした。
骨董の数々を目の当たりにして、思わず(というか毎回)店主の方と古美術談義に華を咲かせてしまいます。筆者はこの日「春日大社展」を観覧したこともあり、奈良の古美術について色々お話をさせていただきました。すると一階の店舗から奈良ゆかりの陶芸家・大塩正人作、竜の香合(こうごう)を見せてくださいました。香合は茶室で香を炊くため、その香を収納する茶道具の一種ですが、実際手にするのは初めて。店主ご説明の傍ら隅々まで鑑賞させていただきました。
冒頭でもお話した通り2階には「瑜伽庵」とは別に「喫茶(コーヒー&ティールーム)」スペースが設けられています。壁には様々なアンティーク皿が飾られ、茶室とは打って変わって西洋の雰囲気で一杯です。喫茶ではコーヒーや紅茶、軽食をいただくことができます。座席近くのガラスケースにはアンティークの洋食器が並べられていて、商品として購入することが可能です。
この春「茶の湯」を謳歌せよ!
茶道、ましてや古美術となると敷居の高いイメージがありますが、大久保美術、ギャラリー大久保は喫茶を通じてこれらを身近に感じさせてくれる素敵なお店です。
また、2017年4月には東京国立博物館で茶の湯展が開催されます。この特別展では国宝曜変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん)が展示されるそうで、この春「茶の湯文化」が話題を席巻しそうです。上野散策の折り大久保美術、ギャラリー大久保で「茶の湯」を一足先に体感してみてはいかがでしょうか。
追記:茶の湯展に行ってきました!
ギャラリー大久保 / 基本情報
場所:東京都台東区谷中6-2-40 2階【地図】
営業時間:
●瑜伽庵 11時~17時(ラストオーダー16時)
●喫 茶 11時~18時(ラストオーダー17時)
定休日:月曜日(祝日の場合は営業)・火曜日
ギャラリー大久保公式サイト
http://gallery-okubo.tokyo/
Googleストリートビュー(インドアビュー)で店内の様子をご覧いただけます。
http://gallery-okubo.tokyo/interior-view/